ブラジル、コロンビア、グアテマラ、エチオピア、イエメン、タンザニアなど、珈琲豆の産地にこだわる人は多いですが、珈琲豆の精製方法にこだわる人は少ないと思います。精製方法の違いによって、珈琲の味わいに微妙な差が生じます。コーヒーノキにはコーヒーチェリーと呼ばれる赤い実が生り、このコーヒーチェリーから外皮・果肉・粘液質(ミューシレージ)・パーチメント・シルバースキンを除去するのが精製です。
「プロが教えるこだわりのコーヒー」田口護著(NHK出版)より。
精製の過程を経て、コーヒーチェリーは下の写真のような生豆になります。
精製にはいろいろな方法があります。
■水洗式(ウォッシュド)
まず、コーヒーチェリーから外皮と果肉を取り除いた後、豆に付着しているヌルヌルした粘液質(ミューシレージ)を水で洗い、それから乾燥する方法です。中南米・カリブ海諸国・アジア・アフリカなどで広く行われています。水洗式の豆は、その過程で何度も選別されるので、豆面が綺麗で品質が揃っていています。すっきりとした酸味があり、味がクリアです。
■乾燥式(ナチュラル)
コーヒーチェリーを果実のまま乾燥させ、乾いた果肉やパーチメントなどを脱穀する方法です。ブラジル・エチオピア・イエメンなどで行われています。工程が単純で水が不要なので、コストがあまりかかりませんが、天候に左右されやすいリスクがあります。また、欠点豆などが選別される機会が少ないので、品質にバラツキが出やすい面があります。酸味が穏やかで、独特の香りと甘みがあります。
■パルプドナチュラル
外皮と果肉を取り除くまでは水洗式(ウォッシュド)と同じですが、粘液質(ミューシレージ)を洗い流さずに乾燥させます。水を使わないのでコストも抑えられます。ブラジルで開発された方法で、中米ではハニーコーヒーとも呼ばれます。水洗式よりも酸味が柔らかくなって甘みもでます。つまり、乾燥式の風味を残しつつ、水洗式のような品質の均一性も得られるわけです。
■スマトラ式
インドネシアのスマトラ島で行なわれている方法で、銘柄としては「マンデリン」がこれに該当します。上記の方法ではいずれも、豆にパーチメントと呼ばれる殻が残っている状態で乾燥させますが、スマトラ式では生乾きの状態でパーチメントを脱穀して生豆の状態にしてしまいます。豆は独特の深緑色をしています。豆が傷みやすいリクスがありますが、酸味が穏やかで、独特の香りと濃厚なコクがあります。
【追記】
あまりいい例えではないかもしれませんが、日本酒の味の傾向に例えると、水洗式は「速醸」、乾燥式は「生酛」、パルプドナチュラルは「山廃」というイメージかもしれません。
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