THE 手取川正宗 祝30周年記念酒

久しぶりに西荻窪の三ツ矢酒店を覗いてみたら、手取川とは思えない真っ赤なラベルのTHE 手取川正宗 祝30周年記念酒があったので、思わず購入しました。
小泉商店手造り地酒会発足と手取川正宗復活の二つの30周年記念酒だそうです。精米歩留まり50%なので、本醸造酒といっても、吟醸酒に近いスペックです。さっそく飲んでみると、予想以上に辛口で力強いお酒でした。それで赤いラベルなのかな?
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日本酒の話(その5) 硬水と軟水

日本酒の味に大きく影響するのが仕込み水の硬度です。硬度の高い(ミネラル分が多い)水ほど酵母の活動が活発になり発酵が進みやすいので、酒造に向くとされていました。その典型が灘の宮水です。
ところが、明治時代になって、広島県の三浦仙三郎によって軟水醸造法が開発されました。軟水で仕込むと、酵母の湧きが遅い反面、ソフトでマイルドな味わいのお酒ができ、むしろ現代人の味覚に合っている評価がされるようになりました。
私が好きな地酒も軟水仕込みのものが多いです(たとえば下のような銘柄)。
諏訪泉 鵬 使用水:千代川伏流水(軟水)
歓びの泉 使用水:高梁川系伏流水(軟水)
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日本酒の話(その4) 「純米酒」

「純米酒」という特定名称の日本酒の人気が高いと感じています。たぶんそれは、純米酒以外のお酒に表示されている「醸造用アルコール」という文字のイメージがあまりよくないからでしょう。
純米酒の定義は、「白米、米麹および水だけを原料として製造した清酒で、香味及び色沢が良好なもの。ただし、その白米は、3等以上に格付けた玄米又はこれに相当する玄米を使用し、さらに米麹の総重量は、白米の総重量に対して15%以上必要」で、簡単にいえば、醸造用アルコールを添加(いわゆるアル添)していないお酒でです。それでは醸造用アルコールとはどんなものかというと、「でんぷん質物又は含糖質物を原料として発酵させて蒸留したアルコール」で、主な原料は廃糖蜜・米・サツマイモ・トウモロコシなどです。
たしかに歴史的には、三倍増醸清酒のように米不足を補うためにアルコールが加えられていた時期がありました。でももっと遡ると、「柱焼酎」というお酒の質を高めるための古典的技法に行き着くと言われています。そして、現在のアルコール添加も以下のような狙いで行われています。

  1. 日本酒の香味成分のなかには水には溶け出さないものがあり、アルコールを添加することによりこの成分の溶出を促し、香味を調整する
  2. 酒質が鈍重になってしまうのを防ぎ、軽快ですっきりとした味わいにする
  3. 香味の劣化につながる火落菌の増殖を防ぐ

吟醸酒はアルコール添加を前提として開発されたと考える人もいるくらいなので、アルコール添加の技術的意味を正しく理解すると、お酒の選択肢が変わってきます。

居酒屋 一休 武蔵境店

武蔵境は大学が多い街なので、吉祥寺や三鷹に比べると飲食店の価格設定がかなりお値打ちです。「東京で一番安い店」という看板にひかれて居酒屋 一休に入りましたが、たしかに量が多くて安かったです。一般客とコンパをする学生とは分煙?のように部屋が分かれています。
ただし、安いのをいいことに延々と居座ってたくさん飲み食いしてしまったので、支払額は思ったより多く、翌日ひどい二日酔いになりました。料理の写真は撮りわすれましたw
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日本酒の話(その3) 「清酒の製法品質表示基準」

地酒ブーム以降、お酒を選ぶ基準が極端に「銘柄」に偏ってしまっていると感じています。同じ「銘柄」のお酒でも、大吟醸酒や本醸造酒などの特定名称が違うとまったく別のお酒と言えるくらい味が違います。だから、「銘柄」だけを基準にお酒を論じるのはあまり意味がないような気がします。これに対して、「◯◯の大吟醸はとてもフルーティで吟醸香(特に含み香)がすばらしい」とか「△△の本醸造酒はすっきりとした喉越しで、特に常温でおいしい」といった表現には意味があると思います。なお、ある特定名称(たいてい大吟醸)に限定して使われる「銘柄」もあるので、この場合は「銘柄」だけで論じても意味があります。
なお、国税庁のこのページの中ほどの表を見ると、清酒の特定名称分類と原料・製法の関係がよく分かります。
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日本酒の話(その2) 「YK35」

(その1)では生酛と山廃について書きましたが、これは本醸造クラスのお酒の品質が向上したという話で、大吟醸の品質はまた別の次元の話になります。
大吟醸という特定名称ができたのは比較的最近のことです。もともとは、国税庁(現:独立行政法人酒類総合研究所)の全国新酒鑑評会に出品するために、採算を度外視して、蔵と杜氏の名誉をかけて造っていた特別なお酒でした。売るために造るお酒ではないので、出品した残りは特級酒に混ぜたりしていたそうです。これを、「大吟醸」と銘打って、超高級なお酒として市場に出したところ受け入れられたのが始まりです。
吟醸造りにはいくつかのポイントがあります。
1)酒造好適米を使用
2)高い精米歩留まり
3)吟醸酒用酵母を使用
4)長期低温発酵
これを極限まで突き詰めたのが「YK35」で、具体的には「山田錦・協会9号酵母・精米歩留まり35%」の組み合わせです。ただ、「YK35」までしなくても十分美味しい大吟醸ができるので、「YK35」は高く売るための手段のような感じがします。
大吟醸はこういうとてつもないお酒なので、なかには4合瓶で5,000円といったすごい値段のものもあります。さらにこれを数年保存し、「古酒」として付加価値を高めたものもあります。ただ日本酒の場合は、経年劣化の悪影響のほうが大きいので、せっかくの大吟醸は新しいうちに飲む方がリスクが少ないと思われます。
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日本酒の話(その1) 「生酛と山廃」

ここ20年くらいの間に、日本酒の醸造技術が格段に進歩してきたと感じています。かつては杜氏の勘に頼っていた領域が正確に数値制御できるようになり、目標とするターゲットの品質がきちんと作り込めるようになってきたのでしょう。同時に、「生酛造り」や「山廃造り」といった昔ながらの醸造技法が見直され、最新の生産管理技術によって復活してきました。
日本酒の醸造技術のポイントは「一に麹、二に酛、三に造り」と言われています。「麹造り」は蒸した米に麹菌をふりかけて麹を造る過程、「酛(=酒母造り)」は酛桶と呼ばれる小さなタンクのなかで酵母を大量に増やす過程、「造り(=醪造り)」は大きな仕込みタンクで醪を発酵させる過程です。酒蔵の風景としてよくテレビに映される大きなタンクは醪の仕込みタンクです。
さて、「生酛」や「山廃」は、このなかで2番目の酛造りの技法です。酛桶は蓋をせずに開けっ放しにするので、外部から侵入する雑菌や野生酵母を乳酸で駆逐する必要があります。この乳酸の作り方の違いによって「生酛」「山廃酛」「速醸酛」に大別されます。歴史的にみて、古くから行われていたのが「生酛造り」、そのなかで重労働を要する「山卸」というプロセスを廃止したのが「山廃造り」、そして人工的に乳酸を添加するのが「速醸酛造り」です。最近のお酒はほとんどが速醸酛造りでしたが、「生酛造り」や「山廃造り」では途中で死滅しない強い酒母ができるので、その結果しっかりとした品質のお酒ができると、近年大いに見直されています。
ちなみに、初めて生酛造りの量産化に成功したのは菊正宗酒造で、上撰・本醸造酒をすべて生酛造りに転換しています。また、黄桜は山廃造りに力を入れています。
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