5月23日(土)に東京大学伊藤国際学術研究センターの伊藤謝恩ホールでドラッカー学会の10周年記念総会・講演会が行われました(プログラムは→こちら)。今年は、ドラッカーが亡くなってから10年、そしてドラッカー学会が発足してから10年の節目の年です。何も研究活動をしていない幽霊会員の私ですが、毎回有益な話が聴けるので、今年も参加してきました。
特に印象に残ったのは田中弥生さんの講演でした。クレアモントのドラッカーの自宅のそばに居を構えて、ドラッカーから直接学んだ人ならではの深い内容で、ドラッカーの思想の骨格を知ることができました。
田中弥生さんの講演の重要な部分をまとめてみました。
- 1930年代のドイツの政治と経済は混乱しており、安定を求める国民は「心の底では違うと思いながらもそこにすがるしかない」という気持ちでナチスを選択した。ナチスは民主的な手続きによって国民に選ばれたのである。
- ナチスの台頭を目の当たりにしたドラッカーがたどり着いた望ましい社会像は「一人ひとりが位置と役割をもつ自由社会」である。
- ドラッカーは当初は、企業が「位置と役割を持っていきいきと生きる場」を提供するコミュニティの役割を果たすと考えた。そのために彼が考えたのが「マネジメント論」である。
- ところが、1980年代になると、かならずしも企業がコミュニティの役割を果たさないことにドラッカーは気づいた。企業に代わってコミュニティを形成するものとして彼が期待したのが非営利組織である。
- 非営利組織は2つの役割を担う。それは「市民性創造」と「社会改革」である。
- 今の日本の状況は1930年代のドイツと似てはいないか?日本人はなぜ、自ら自由を放棄するのか?
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