ドラッカーを信奉する者としてぜひ行ってみたいと思っていた”ドラッカー・コレクション 珠玉の水墨画 「マネジメントの父」が愛した日本の美”を観てきました。
「恋に落ちた」と表現するほど、ドラッカーは日本絵画を愛していました。彼が初めて日本絵画に接したのは1933年、24歳の時でした。ロンドンアカデミー付近を歩いていたら突然雨が降ってきたので、雨宿りのために入った美術館でたまたま日本画展が開かれていたのだそうです。また、アメリカに移住してからも、「正気を取り戻し、世界への視野を正すために」ひんぱんに日本絵画展に足を運んでいます。
私はモノクロ写真を撮りますが、写真と水墨画とでは表現の枠組みがまったく違うと思うので、正直に言うと、ドラッカー・コレクションの日本絵画自体には、あまり心動かされるものはありませんでした。しかし、ドラッカーが日本絵画からどんな影響を受けたのか、少しわかったような気がしました。
西洋の近代科学は、物事を要素還元的に細かく分解して調べようとします。ドラッカーはこのアプローチに疑問を抱いていて、物事を全体として知覚(perceive)することを重視しました。このようなドラッカーのアプローチは、線や点ではなく全体としての空間を表現している日本絵画から強く影響を受けた結果ではないでしょうか。「日本画はトポロジカルである」とドラッカーは言っています。
展示のいちばん最後に、クレアモントの自宅でドラッカーが机に向かっている動画が映し出されていました。彼が晩年に使っていたタイプライターは「Brother GX-6750」で、このタイプライターとファクシミリを駆使して執筆していたようです。
”ドラッカー・コレクション 珠玉の水墨画 「マネジメントの父」が愛した日本の美”は、千葉市美術館で6月28日(日)まで開催されています。
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