いわさききょうこさんの7年ぶりのオリジナルフルアルバム「道の鼓動」の発売記念ライブが、2月21日(水)にティアラこうとう小ホールで行われました。
この日のいわさきさんはかなり気合が入っていて、ティアラこうとう小ホールの音響の良さと相まって、まさに「熱唱」という言葉がピッタリの迫力のステージでした。「道の鼓動」のメインテーマは、ライブをしながら全国を巡る旅のなかで出会ったさまざまな人や出来事ですが、もう一つ、「道」=「人生」だと捉えると、いわさきさん自身の人生における決意のようなものが強く込められているような気がします。
1年くらい前か、あるいはもっと前だったかもしれませんが、FacebookかTwitterにいわさきさんが「あなたが歩きたかった道を、今、私は歩いているんだね」という言葉を載せたのを、とても印象深く覚えています。これはどういう意味なのだろうとずっと考えていたのですが、今回のライブでその意味が少し分かったような気がします。ライブ8曲めの「悪魔か菩薩」の間奏の間に、いわさきさんはいったんステージから降り、カラフルなチェック柄のジャケットとベルボトムのジーンズにすばやく着替えました。そのジャケットは親戚の女性のもので、その方はいまは亡くなっているそうです。そのことを聴いたとき、「あなたが歩きたかった道」の「あなた」は、その女性かもしれないと思いました。チェック柄のジャケットはステージ衣装のように見えるので、その女性も音楽の道を目指していたのではないでしょうか。そう思って聴くと、「空へ紡ぐうた」や「あなたの歌を聴いている」の歌詞がとても深く感じられます。
セットリストの曲順に感想などを書いていきたいと思います。なお、(*)印はアルバム「道の鼓動」収録曲です。
1)幻夏
最近のライブでよく歌う曲です。いわさきさんは東京都墨田区で生まれましたが、すぐに千葉県茂原市に移り住んで、6歳まで豊かな自然の中で育ったそうです。この頃の楽しい思い出が、現在のいわさきさんを形作っているような気がします。
2)花嫁
この曲も最近のライブでよく歌う曲です。作詞は北山修さん、作曲は端田宣彦さんと坂庭省悟さん。1971年に発売された「はしだのりひことクライマックス」のファーストシングルです。昔から何度も何度も聴いた曲ですが、いわさきさんが歌うと「帰れない 何があっても 心に誓うの」というフレーズが強く心に響きます。
3)空へ紡ぐうた (*)
「あなたがいなくて寂しいわ」という歌詞から始まるとても切ない曲。この「あなた」は、チェック柄のジャケットの持ち主だった親戚の女性ではないかと思います。「あなた」に対する深い愛が感じ取れます。
4)広がり逝くソラ (*)
歌い始める前にピアノをポーンと弾いて、「これは単音」、「これは和音」、「こうやって命が繋がる」と語ったのが印象的でした。瞬間、瞬間の命が繋がって、それが永遠になっていく、そんな世界の成り立ちが感じられる曲です。
5)セブンティーン (*)
私はこの曲がかなり気に入っています。17歳の少女の微妙な心の動きを何と巧みに表現しているのでしょう。アレンジも可愛らしい!「常富さんはセブンティですね」という会話もおもしろかったです。
6)明日の話をしたくなる (*)
アルバム1曲めの重要な曲で、諸行無常の世界観が表現されています。同時に、いわさきさん自身の決意が込められているのではないでしょうか?70年代のフォークソングのテイストが感じられます。
7)武者震い
全国各地でカバーされている名曲。「でりそめっされんだ」は嫌なことがあった日に、それを吹き飛ばすために叫びたいフレーズです。
8)悪魔か菩薩 (*)
この曲も最近よく歌われる曲。世の中のあらゆる事柄や人間の心の多面性が歌われているような気がします。
9)松屋の歌
みなさん、松屋に行って、この曲を聴きましょう!
10)キジトラの猫 (*)
まるで童話のなかの世界のような神秘的な光景が歌われています。この猫がいる場所は、この世界とそっくりだけど少し違うパラレルワールドなのかもしれません。
11)あなたの歌を聴いている (*)
「空へ紡ぐうた」と同じように、この曲の「あなた」はチェック柄のジャケットの持ち主の人だと思います。「あなた」への優しい思いが伝わってきます。
12)せめてもの口づけを未来へ (*)
井上ともやすさん作詞・作曲のプロテストソング。本人もゲストとしてステージに登場し、ハモニカとコーラスで盛り上げました。
13)心の街に行こう
井上さんの曲。井上さんは口は悪いけれど、すごく優しい人だということがよく分かる曲です。
14)君住む街へ〜Tadami Line〜 (*)
只見線が走る新潟県魚沼市のことを歌った曲。子供の頃にSLを追いかけていた私にとっては、只見線は行ってみたかった憧れの路線でした。今度こそ行ってみたいと思います。なお、アルバムジャケットの裏面の写真は、只見線の車内で撮影したものです。
15)はじまりの詩 (*)
「アイヌ神謡集」の作者・知里幸恵さんのことを描いた一人芝居のエンディングテーマ。劇団「ムカシ玩具(おもちゃ)」の舞香さんが演じて、いわさきさんが音楽を担当しています。いわさきさんの歌声がとても神々しく響き渡ります。
16)ふたりぼっち
この曲もライブで歌われることが多い曲。地方から出てきた同級生の視点で「東京」が表現されています。「ひとりぼっち」から「ふたりぼっち」になることの幸せが感じられます。
アンコール1)愛燦燦
いわさきさんは幼稚園の頃、なぜか自分の声が変だと思い込んで歌が嫌いになってしまいましたが、それから6年後に、おばあさんから美空ひばりさんの「川の流れのように」を教わり、初めて歌が好きになったそうです。同じく美空ひばりさんの「愛燦燦」がカバーアルバム「歌は眠らない」に収録されています。
ここで、常富さんは登場する場面を間違えたけれど、この間違いにこそ、常富さんの優しさが現れていると思いました。
アンコール2)いつか逢う日に (*)
全国をライブをしながら巡っていると、次にその場所でライブができるのは何年か先になってしまう場合が多いそうです。そんな時に「また元気で逢いましょう」という気持ちを込めたすばらしい曲。みんなで合唱できるので、ライブの最後に歌うのにぴったりの曲です。
【サポート】
常富喜雄:ギター・コーラス
クラッシー:パーカッション
中内計:キーボード
井上ともやす(ゲスト):ハモニカ・コーラス
贈られた豪華な花。「道の鼓動」の書は、いわさきさんのお母さんの作品。
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