自分の考えを文章にまとめる準備段階として、自分が共感しているいないに関わらず、今の世の中に大きな影響を与えている思想や主義について、それがどのように生まれたのか、どのように広まったのか、どのような意図や時代背景があったのかということをざっくり整理しようとしています。そういう作業のなかで、ずっと忘却の彼方にあった「蜂の寓話 私悪すなわち公益」のことを急に思い出しました。
1714年にバーナード・デ・マンデヴィルが「蜂の寓話」のなかで示した「一般に悪徳とされる個人の利己的な欲求充足や利益追求が結果的に社会全体の利益につながる」とする考え方は、その後アダム・スミスに大きな影響を与え、さらに新古典派のアルフレッド・マーシャルに引き継がれていったと言われています。
今から四十数年前に受けた経済思想史の講義で、経済学の古典的な名著(多くは初版本)を自分の手に取って見る機会に恵まれたのですが、そのなかに「蜂の寓話(第3版)」が含まれていた記憶がうっすらとあります。講義のなかでも「蜂の寓話」の説明がありましたが、当時の私にはこれが「寓話(たとえ話)」だという認識がなかったので、何かお伽話を聞いているような違和感があって、何が言いたいのかよく分かりませんでした。
P.F.ドラッカーは第二次世界大戦が始まった1939年に刊行した『「経済人」の終わり』において、アダム・スミス以来の「経済人」という概念(人間モデル)が破綻したことを明らかにしています。今こそ、経済至上主義の出発点とも言うべきこの本を、ドラッカーと同じような視点から読んでみたいと思います。
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