この記事の続編です。
小松正著『いじめは生存戦略だった!?』が自分の思っていた内容とは違ったので、進化心理学からは少し離れて、いじめの実態を深く研究している内藤朝雄氏の『いじめの構造 なぜ人が怪物になるのか』を読んでみることにしました。
まだ2章までを読んだ段階ですが、「いじめ」の生々しい実態が克明に記されていて、その背後にある構造的な力学が浮かび上がってきます。
ただし、リチャード・ドーキンスの「延長された表現型」の考え方を持ち出して、社会が寄生虫のように個人の中に侵入すると述べている個所は、例え話として使っているとしても、概念的に誤解があるような気がしました。「延長された表現型」とは、たとえばビーバーが造るダムのように「ある遺伝子型の効果がその個体の範囲を超えて発現する」という概念です。
とは言え、著者による狭義の「いじめ」の定義=「社会状況に構造的に埋め込まれたしかたで、かつ集合性の力を当事者が体験するようなしかたで、実効的に遂行された嗜虐的関与」は、的を射ていると思います。
また、「不全感を抱えた者の心理システムが誤作動を起こし、突然、世界と自己が力に満ち、すべてが救済されたかのような無限の感覚(全能感)が生成する」という個所は、「いじめ」の説明だけにとどまらず、少し前のこの記事に書いたような自尊心と凶暴性の関係(ひいては戦争の原因)とも関連するように感じます。けっきょく、根っこにあるものは同じではないでしょうか?
これからの章を、私がこの一年間学んできた進化心理学の知識と関連づけながら読み進めようと思います。
コメント