この記事の続編です。
2006年12月2日の朝日新聞に魚類学者でタレントのさかなクンがイジメに関して語った記事が載っていて、深イイ話だと話題になっているようです(→こちら)。魚の世界にもイジメはあって、広い海では仲良く群れて泳いでいるのに、狭い水槽に入れると、1匹を仲間はずれにして攻撃し始めるそうです。
『いじめの構造 なぜ人が怪物になるのか』で、内藤朝雄氏は「生徒たちは一日中ベタベタと共同生活を送ることを強いられ、このかかわり合いから逃れることはできない」と指摘しています。つまり、魚の場合も、生徒たちの場合も、外部から閉ざされた狭い空間という環境がイジメの誘発要因になっているわけです。たぶん、どの動物も、環境によっては攻撃的になる本能を遺伝的に持っているのだと思いますが、「環境によっては」という部分が重要です。高い知能を持ったヒトは、そういった攻撃的な本能が顔を出すような環境を避けることができるはずです。
考えてみれば、現代社会に生きるわれわれは、目に見えない何重もの水槽に囲まれて生きているような気がします。外側から挙げると、宗教(宗派)、国家、政党、業界団体、会社、学校……。これらの多くは、ピラミッド型の構造を持つ伽藍組織で、その起源は古代の軍隊にまで遡ります。1万年くらい前から、なぜかヒトは大規模な戦争をするようになりましたが、王や指揮官は、戦闘員を「駒」として自由に動かせるように、ピラミッド型の組織構造を考え出しました。また、作戦が相手に漏れてはいけないので、このような組織は外部と遮断されています。相手を出し抜いて打ち負かすために考え出された古代の組織が、現在も継承され、公共の福祉を目的とするような組織にも流用されているのはちょっと驚きです。
自由で機能する社会を目指すうえでは、閉鎖的な組織の殻を破って、外部と活発に動的情報が交換されるような開放的な組織に代えていくことが重要です。そうすれば、複雑系的な相互依存関係の作用によって、調和が取れた社会が創発されるはずです。そこには、権力を持ったリーダーは不要です。
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